消毒用アルコール 消防法 危険物規制について
 消防法で定める危険物は、生活の中で幅広く使用されています。たとえば殺虫剤スプレー、手指消毒液、またはガソリン、灯油など産業及び生活に欠かせない物質であり、これを安全に利用するための知識と経験の集大成が消防法及び関連法の各所に定められています。
 
 この法律は歴史も長く、過去の数々の悲惨な事故を教訓に積み上げられています。 法律で定められているからということだけではなく、これら諸先輩方の教訓を大いに利用していただければ幸いです。
 
 さて、アルコールの用途はさまざまですが、ここでは消毒用アルコールを容器(瓶、缶など)で常時または一時的に保管する場合を想定しております。
消防法で定める危険物に該当するか?
方法❶ 容器のラベル確認
( ラベル表示の例 )
方法❷ アルコール濃度による確認
 危険物のアルコール類には、(一般的な消毒液に使用される)エタノール(別名:エチルアルコール)や、燃料などに使用されるメタノール(別名:メチルアルコール)などがあります。
 この成分の 濃度が60%以上(重量%)のものが危険物 第四類 アルコール類に該当します。
方法❸ 製造会社また売店への確認
( 電話等での確認の例 )
商品名○○は、消防法の危険物 第4類 アルコール類に該当しますか?
ご確認の結果、消防法の危険物に該当しない場合は、消防法上規制されませんので、以降のご説明は不用です。
危険物に該当する消毒用アルコールの保管量ごとの消防手続
❶ 常時保管する場合
消防関連法で定める技術上の基準を満たす必要があります。
 
保管量
消防手続
80ℓ 未満
手続不要
80ℓ 以上 400ℓ 未満
少量危険物設置届出
400ℓ 以上
危険物貯蔵所設置許可申請
 
❷ 一時的に400ℓ以上保管する場合
期間
消防手続
10日以内
危険物仮貯蔵・仮取扱承認申請
上表の他、一時的な保管については、緊急対策として下記の場合もあります。
 
 
 その他市町村条例により、80L以上400L未満の一時的保管についての基準が定めている場合があります。 実際の指導内容は、各市町村ごとに異なる場合がありますので、最寄りの消防署へ相談ください。
 
 
消毒用アルコール 保管・取扱い上の注意事項
 80L以上を保管をする場合は、消防関連法の技術上の基準が多い為、消防法危険物関連法に熟知した専門家の協力のもと消防手続を行った後、専用ユニット品の購入または専門業者に建設させてたうえ消防検査を受けてください。この場合は各専門家が確認するので、概ね問題は少ないと思います。
 
 また、保管庫・倉庫の寸法を必要以上に大きくすることはお勧めできません。余分なスペースができると当初想定した量以上に保管してしまう実例を多く見かけるためです。危険物の量が増える分だけ危険度が増すとお考えいただいた方がよろしいかと思います。
 
 前記のように、新規に危険物保管庫・倉庫を用意するときも注意が必要ですが、更に気を付けていただきたいのはその後の危険物の取扱い(運用)です。皆様にとっても当たり前のことを下記に示します。急いでいるとき、特別な事情が発生したとき等、注意を怠ってしまうことにより火災等の事故が発生する可能性があります。できれば、出入口に「消毒用アルコールの安全な取扱いについて」などを貼付けていただいて、定期的(防災の日、避難訓練時等)に、危険物倉庫の前で読み合わせしていただくことをお勧め致します。
火気厳禁
 火気の近くで使用しないこと。
 
 
直射日光・高温厳禁
 
 直射日光が当たる場所、高温になる場所に置かないこと。
 
換気厳守
 換気の良い場所で使用すること。
 
漏らすな、こぼすな、落下させるな
重ね積み厳禁
 重ね積みは容器等の落下の原因になります。
 特に、災害時などの混乱状況でご使用する場合は、2次災害の原因になります。災害対策用に準備したもので、
 災害を起こしては本末転倒です。
 耐震棚等、落下防止対策は優先度(大)です。
消防へ相談するとき(保管するアルコールが危険物に該当する場合のみ)
消毒用アルコールの保管量が概ね決定し、専門業者との協議が進みましたら、消防への事前相談を行ってください。
連絡先は、市町村によって異なりますので、まずは、保管する予定場所の市町村内のいずれかの消防署に電話のうえ、担当部署を教えて貰ってください。
事前の準備内容(例)
1.保管量(最大値)
2.敷地内概要図
敷地内の保管予定場所を説明するためのもの
(インターネット上の地図の拡大図でも構いません)
3.保管庫、倉庫の図面(もし用意できれば)
物性比較
代表的な危険物の物性を下記とおり示します。
特に注意が必要なのは、外気温で引火点に達するガソリンとアルコールです。
これらの電気機器は防爆構造品をご使用し、静電気除去対策を施してください。
 
消防法
(危険物)
分類と
指定数量
引火点
(℃)
比 重
蒸気比重
燃焼範囲
(%)
主な用途例
ガソリン
第四類
第一石油類
非水溶性
200ℓ
-40以下
0.65~0.75
3~4
1.4~7.6
自動車燃料
発電機燃料
エタノール
第四類
アルコール類
400ℓ
+13程度
0.8程度
1.6
3.3~19
消毒剤
 
酒類
灯 油
第四類
第二石油類
非水溶性
1,000ℓ
+40以上
0.8程度
4.5
1.1~6.0
暖房燃料
軽 油
第四類
第二石油類
非水溶性
1,000ℓ
+45以上
0.85程度
4.5
1.0~6.0
自動車燃料
発電機燃料
重 油
第四類
第三石油類
非水溶性
2,000ℓ
60~150
0.9~1.0
4.5
 
ボイラー燃料
資料1:

消防法上の危険物
「消防法上の危険物」 消防法上の と限定している理由
 一般的に「危険物」と言えば、ガラス・刃物・尖ったもの・ガソリン・ガスなど様々な危険な物を表すことが多いでしょう。ここで敢えて「消防法上の危険物」とした理由は、消防法では危険物を明確に示しているため、世間でいう危険物とは区別するためです。
 
 
 
(参考文献 出典 近代消防社 新 消防・建築法規のドッキング講座)より
 
 消防関係者にとって、”危険物”といえばすぐに消防法別表第1にあるような第1類から第6類までの危険物を思い出されることであろう。ところが、法律が変われば、例えば、建築基準法上では危険物といっても、もう少し幅が広く火薬類とか高圧ガスまでを含むこととなるのである。
 世間では、このような法律に基づく危険物だけではなく、もっと幅の広いものを危険物としてとらえていることがある。例えば、地震対策上では、ラジウムだのイリジュウムだのという放射性物質だって危険物の一種かも知れないし、青酸カリのような劇毒物だってやはりそうかも知れないし、毒ガスもある。これらの物質が震災時に飛散したりすることがあると人体に思わぬ被害をもたらすことになりかねない。
消防法上の危険物
消防法の目的
[消防法第1条]
この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
 
関連する法令等
・ 消防法(以下表記:法)
・ 危険物の規制に関する政令(以下表記:政令)
・ 危険物の規制に関する規則(以下表記:規則)
・ 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(以下表記:告示)
危険物の定義・・危険物とは
危険物とは・・
広義の危険物は、高圧ガス、放射性物質、火薬類、毒物、劇物等さまざまなものがありますが、消防法上の危険物は、火災の発生や拡大の危険性が大きいものなどを次のとおりに定義しています。
 
 
 
[法第2条第7項]
危険物とは、法別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
 
 
 
詳細は上記法別表第1のとおりですが、概要をまとめると次表になります。
なお、アルコールは、第4類の引火性液体に該当します。
類別
性質
性質の概要
第1類
酸化性固体
他の物質に酸素を供給し、可燃性物質と混合すると極めて激しい燃焼を起こさせる固体
第2類
可燃性固体
燃えやすい固体
第3類
自然発火性物質及び禁水性物質
空気中で自然発火し、又は水に接触すると発火する物質
第4類
引火性液体
引火性を有する液体
第5類
自己反応性物質
加熱で急激に反応し速燃する物質
第6類
酸化性液体
強酸性で、可燃性物質との接触で発火させる液体
さらに、第4類 を細かく分けると下表のようになります。
類別
品名
性質
品名例
指定数量
第4類
特殊引火物
50 L
第1石油類
非水溶性液体
ガソリン
200 L
水溶性液体
400 L
アルコール類
エタノール ・ メタノール
400 L
第2石油類
非水溶性液体
灯油・軽油
1,000 L
水溶性液体
2,000 L
第3石油類
非水溶性液体
重油
2,000 L
水溶性液体
4,000 L
第4石油類
6,000 L
動植物油類
10,000 L
資料2:

第四類 アルコール類 また その重量パーセント
[消防法 別表第1 備考 第13号]
 
アルコール類とは、1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和1価アルコール(変性アルコールを含む。)をいい、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。
[危険物の規制に関する規則 第1条の3第4項]
 
法別表第1備考第13号の組成等を勘案して総務省令で定めるものは、次のものとする。
1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和1価アルコールの含有量が60パーセント未満の水溶液
●上記60パーセントの「濃度の種類」は、重量%です。
 重量%(重量による比率であり、容積による比率ではない)であることは下記に明記されています。
化学的な説明
❶ アルコールの構造と分類
(1) アルコールとその構造
アルカン C2n+2 の水素を、ヒドロキシル基 -OH で置換した形の化合物をアルコールという。
アルコールの構造は、下図とおり。
(2) アルコールの分類
(ーOH)の数による分類
1分子中に含まれるーOHの数により、次のように分類される。
 
① 1価アルコール:1分子中に-OHを1個含むもの(例 メタノール、エタノール)
② 2価アルコール:1分子中にーOHを2個含むもの(例 エチレングリコール)
❷ 有機化合物の構造と分類 (前記 飽和、アルカン、ヒドロキシル基について)
(1) 炭素骨格による分類
有機化合物(炭素を含む化合物)は、骨格をつくる炭素原子が鎖状に結合している鎖式化合物と、環状に結合している部分を含む環式化合物とに大別される。また、炭素原子同士がすべて単結合で結合している飽和化合物と、炭素原子間の結合に不飽和結合(二重結合、三重結合)を含む不飽和化合物に分類される。
飽和結合 単結合
不飽和結合 二重結合
アルカンとは、炭化水素(炭素と水素だけでできている化合物)で、鎖式炭化水素のうち飽和炭化水素の総称
(2) 官能基
官能基とは、有機化合物の性質を決めるはたらきをもつ原子団のこと。アルコールの官能基は、ヒドロキシル基-OHです。
(3) 有機化合物の表し方
①分子式 分子をつくっている原子の種類と数を表す式
②示性式 分子式の中から官能基を抜き出して表す式
③構造式 分子中の個々の原子の結合のしかたや結合の種類(単結合か二重結合等)を表す式
 
エタノール(慣用名:エチルアルコール)の場合
① 分子式
② 示性式
OH
③ 構造式